先日、息子が読み終えたゾロリをリストでチェックしていると書いたところ、「ゾロリ、読ませていいんですね!」とコメントをいただきました。
これは珍しいことではなくて、絵本関係の仕事をしているせいか、息子がゾロリの愛読者だと話すと、かなりの確率で驚かれる。
ちなみに、「かいけつゾロリ」(原ゆたか作、ポプラ社)は累計3750万部の大人気シリーズ。2019年6月現在で64巻まで発売されていて、アニメ化・映画化もされている。
なのに、大人からはちょっと嫌われがち……?
その理由としてよくお聞きするのが、「教育的に問題がある」と「ゾロリしか読まなくなる(文字だけの本を読めなくなる)」の2つだ。
ゾロリは教育的じゃない?
「ゾロリが教育的でない」と言われるのは、ゾロリたちが悪いことをしたり下ネタが多かったりするからのよう。
このあたりの感じ方は、個人差があるので致し方ない。実は私、自分が読んでも全く気にならないのです(なんだか申し訳ない……)。
なんだかんだいってもゾロリは嫌な人ではなく、下ネタもたいしたことはない、と思っている。むしろ、パロディや時事ネタも意外と多く、語彙や知識が増えるという教育的にいいこと(?)もあったりして……。
というわけで、特に私自身が惚れ込むということはないものの、読ませたくないという気持ちもないのである。
ゾロリを読むと、文字だけの本を読まなくなる?
「ゾロリしか読まなくなる(文字だけの本を読めなくなる)」については、構成と、全体の量の多さによるものだと考えらえる。
ゾロリシリーズは絵がメイン。マンガと本の間くらいの構成でとても読みやすいのだけれど、主な読者は絵本から文字がメインの本に移行していきたいタイミングの子どもたち。
60冊以上もあって制覇するのに時間がかかる上、人気すぎて学校の図書室や図書館でなかなか借りられないという現実が、「今読まなければ!」と子どもたちをますます夢中にしてしまい、結果、「ゾロリしか読まない!」と大人をやきもきさせてしまうのだ。
息子はたまたま何でも読みたがるタイプなのだけれど、確かに私も、今ゾロリしか読まない子には、いずれはゾロリを卒業して、もっといろいろな本と出会ってほしいと思っている。
でも、息子が他の本を全く読まなければゾロリを読ませなかったかというと、そんなことはない。
ゾロリしか読まなくても、心配しなくていい理由
私も全巻読んでいるわけではないけれど、ゾロリに盛り込んである「子どもの心に響くもの」は、多分、下ネタだけではない。冒険・友情・恋愛・発明・ことばの語呂や調子の良さ。ああ、これなら子どもはみんな好きだろうなあ、というエネルギーがある。
どんどん読みたくなる、熱中する楽しさを味わえる本があるなら、絶対に読んでおいた方がいい。
だから、「今」ゾロリしか読まなくても、思う存分読ませていい(むしろ、読ませてあげるべき!)。
そして、タイミングを見て(ゾロリブーム終盤の頃)、子どもたちそれぞれのアンテナにひっかかる他の本を紹介してあげるといい。読書好きになったきっかけがゾロリだったというお子さんは、本当に多い。
もし、何をすすめたらいいか分からないときは、そのときはプロを頼るべき。図書館で司書の方に相談するのがおすすめ。私たち絵本専門士有志で運営中のサイト「にこっと絵本」もご参考にどうぞ!
それでもモヤモヤするときは、ゾロリを読んでいるときのお子さんを表情を見てくださいね。きっとすごく、いい顔をしているはず。息子も、ゾロリの話をしているときは、「顔を輝かせるってこういうことね」とわかるような笑顔で、本当にかわいい。あまりにおならの話が長いと聞き流してしまうこともあるけれど、顔はじっくり見ております。
わが家の子どもの本選び
こんなふうに、わが家の場合、私が絵本専門士だからといって、息子が読む絵本を私が全て選んでいるわけではない。
もちろん、年齢や興味に応じて一緒に読みたい絵本はあるので、私も選ぶけれど、ごく小さな頃から息子も自分で選んでいる(そのときの状況によって「もう少しお兄ちゃんになってから」とストップをかけたことは何度かある。ものすごくこわい怪談とか……)。
基本的には、読みたい絵本を好きなように。あれこれ読むうちに、自分にとっていい本を見つける嗅覚も育つだろうし、「何を読もうかなー」と迷う喜びも知ってほしい。
なんといっても、楽しいのが1番! だと思う。
ここまでそんなふうにきているので、息子がゾロリにはまっているのも、私にとってはなんの不思議もない。息子のおもしろいもの、私のおもしろいもの、お互い興味を持てたら理想的だ。
ちなみに。まだ読んでいないゾロリがあると、息子は何も手につかなくなる。そうなると、私が「ゾロリめ……」と心の中で八つ当たりすることはしょっちゅう。そんなものです……。