今年も読書感想文の季節がやってきました。
第68回青少年読書感想文全国コンクール(2022年)の課題図書について、ストーリーや楽しく読んで楽しく書くポイントをご紹介します。中学校の部をどうぞ。
『セカイを科学せよ!』
焦ることなく、じっくり根気よく取り組むのです。ひとつひとつのステップを、だいじに慈しみながら積みあげるのです。
父は日本人、母はロシア人の中学2年生のミハイルは、目立たないよう「世渡りスキル」を磨き、平和に無難に暮らしてきた。でも、日本生まれで日本育ち、見た目は「まっるきりアフリカン」の転校生・山口アビゲイル葉奈がやってきてからは、毎日事件の連続で……。
お互いの影響を受けて変わっていく登場人物たちの様子はもちろん、蟲(むし)好きの葉奈の、世界を「科学的」に見てきた視点や蟲の蘊蓄も、とてもおもしろい。文章が読みやすいので、普段あまり本を読んでいない人にもおすすめ。差別、個性、人間関係、家族などさまざまなテーマを、多方向から考えられる。
人間は、哺乳綱霊長目ヒト科ヒト属ホモ・サピエンス種ということは……?
つまりわたしたち、人種とやらが違っても、マウンテンゴリラとニシローランドゴリラほどの違いもないってことですよっ、DNA的には!
読む&書くを楽しむポイント
- 登場人物が多いので、共感できる人、嫌だなと思う人などが見つかりやすい。気になる登場人物がいたら、まずはその理由や自分との比較を書くことから始めてみよう。
- 「理系は苦手」と思っている人には、特におすすめ。「科学的」とはどういうことか、その奥深さがわかる。
『海を見た日』
アメリカの里親制度を取り上げた物語。里親と3人の里子が暮らす家に、新しく里子がやってきた。それをきっかけに、今までバラバラだった関係が、少しずつ変わり始める。
語り手がひんぱんに変わる形式で書かれていて、それぞれの思いや考え、周りからは見えていなかった事情などがわかる。登場人物を取り巻く過酷な状況に、「重い」「暗い」と読みづらさを感じたとしても、ぜひ最後まで読んでほしい。徐々に、その力強さやあたたかさを感じられるようになるはず。
読む&書くを楽しむポイント
- 日本や海外の里親制度について知ってしましたか? この本を読んで、わかったこと、思ったことをまとめてみよう。
- 印象に残った登場人物やシーンは? その理由は?
『江戸のジャーナリスト 葛飾北斎』
江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の生涯を、その業績と人柄や暮らしぶりなどの両面から描いた本。画業に執念を燃やし、いくつになっても「自分にはまだまだ伸びしろがある」と信じ、長生きできるよう健康管理も怠らず、海外にも興味を持っていた北斎と、北斎に魅了された世界の人々の姿から、何かに夢中になった人のエネルギーが感じられる。
もし北斎に「富士山」「波」というイメージしかなければ、「ある一つの時代の社会の断面を、自分の視点で切り取り、それを表現する人」である「時代の代弁者」北斎の顔を見ることができる。
読む&書くを楽しむポイント
- 北斎のエピソードで印象的だったものは? その理由は? 好きなことを続けること・人とのつながり・どんな時代に生きるかなど、さまざまな切り口で読むことができる。
- 北斎の絵はほぼ掲載されていないので、読む前に絵を見ておくことをおすすめします。