今年も読書感想文の季節がやってきました。
第68回青少年読書感想文全国コンクール(2022年)の課題図書について、ストーリーや楽しく読んで楽しく書くポイントをご紹介します。小学校高学年の部をどうぞ。
『りんごの木を植えて』
りんごの木を植えるのは未来への希望やろな。りんごが実るのを見ることはでけへんでも、新しいりんごの木を植えることが自分の役目だとしたら、それを淡々とすることやろな、と思うんや。希望をなくしたら、人間、生きるのが苦しいと思うで。
みずほの大好きなおじいちゃんに、がんが再発してしまった。けれどもおじいちゃんは、延命のための手術も治療もしないと言う。おじいちゃんの気持ちはわからなくはないけれど、認められないみずほといっしょに、生と死、家族について考えられる物語。
大人でも悩む、そして絶対の正解はないテーマではあるものの、重苦しさよりはあたたかさが伝わってくる。おじいちゃんからみずほへの愛情と、家族からおじいちゃんへの愛情があふれてくるよう。
読む&書くを楽しむポイント
- もし明日、世界が滅亡するとしたら、今日あなたは何をしますか? 本を読む前と読む後、両方考えてみてください。
- もし自分や家族(もちろんペットも)が病気になったら…… 「こうしたい」がありますか?
『風の神送れよ』
「コトの神様」「風の神」と呼ばれる疫病神を祓い、無病を祈る「コト八日行事」は、すべてを子どもたちだけで行う長野県の伝統行事だ。面倒に思い、毎年さぼっていた優斗は、新型コロナウイルス感染症の大流行の中でのコト八日に参加することで、いろいろな人に出会い、少しずつ行事を伝えていく意味がわかるようになっていく。
いつの時代も、皆、見えない病気や苦しみと闘ってきたこと。コト八日行事が、生きようとする必死の思いから生まれてきたこと。責任を果たすこと。信頼すること、されること。伝統行事を軸に、多くの子どもたちの思いが描かれる。
読む&書くを楽しむポイント
- 自分の意志に関係なく、しなければならないこと・あきらめなければならないことがあった人に。そのときの自分と、登場人物たちを比べてみると、どうでしょうか?
- 地域の伝統行事に参加している人は、その意味を改めて考えてみては?
『ぼくの弱虫をなおすには』
嫌な上級生と同じ校舎になるのが怖くて、5年生になりたくないゲイブリエル。でも、親友のフリータが弱虫をなおす作戦を考えて、夏休みの間に一緒に取り組むことになった。
舞台は、アメリカ。イギリスから独立して200年目にあたる1976年、人種差別をなくそうとしたジミー・カーターが大統領選を戦っていた年で、ゲイブリエルは、自分の怖いものを克服する過程で、人種差別とも対峙することになる。
ゲイブリエルとフリータの作戦と共に、差別に立ち向かう人たちの作戦が描かれる。なじみがないことばや文化に読みづらさを感じるかもしれなけれど、ゲイブリエルの素直な視点に導かれて、「明るい未来に足をふみだせる」と思えるようになる。
こわいと思わないようにがんばらなくちゃ、とずっと思ってきた。でも、そうじゃなかったんだ。ぼくに必要なのは、愛を信じること。そうすれば、自然と勇気が湧いてくる。
読む&書くを楽しむポイント
- 本を読む前に、自分の「こわいもの」リストを作ってみよう。読み終えたら、それとどう向き合うか、考えてみては?
- 一番好きな(気になる)登場人物は誰ですか? その理由は? 自分と比較してみよう。
- 「弱虫」って何だろう? 「まわりが敵だらけ」「本当に強い気持ちでがんばらなくちゃいけない」と思ったことはありますか?
『捨てないパン屋の挑戦 しあわせのレシピ』
環境問題に興味のあった、パン嫌いのパン屋の子だった田村さんが、「捨てないパン屋」になるまでが描かれている。
修業中のパン工房を飛び出して、さまざまな仕事をする田村さんが、「ほんもの」と出会い、「いのち」を無駄にしないという学びを得る姿から、本当の豊かさとは何かについて考えさせられる。また、環境・食品ロスなどだけでなく、生き方や働き方という観点からも読める。
読む&書くを楽しむポイント
- 一番心に残ったエピソードは? それはどうして?
- パン・食事・買い物・自然・将来の夢など、今の自分について書き出してみよう。
- まさに今、問題になっている小麦の価格の高騰。国産小麦の自給率の低さ、輸入小麦の農薬の問題などについて考えてみては?