今年も読書感想文の季節がやってきました。
第67回青少年読書感想文全国コンクール(2021年)の課題図書について、ストーリーや楽しく読んで楽しく書くポイントをご紹介します。次は、中学校の部です。
『with you(ウィズ・ユー)』
高校受験を控えた悠人は、母と優秀な兄との3人暮らし。息苦しさから出かけて行った夜の公園で朱音という女の子に出会い、心惹かれる。けれど、朱音は母の介護と家事を背負うヤングケアラーだった。
「ほんの少しだが、勉強が生きることとつながった」― 朱音を通して、悠人は多くのことを知る。同世代の子の負う責任について。身近な友だちの抱えていたもの。誰かを大切にすること。日頃やり過ごしてしまいそうなことを、じっくりと考えてみたくなる物語だ。
読む&書くを楽しむポイント
- 家族や友だちなど、人間関係で悩んでいたり、手助けしたいのにどうしたらいいかわからなかったりすることはありますか?
- 共感できる人、できない人、その理由を考えてみよう。「自分ならこうする(こうしたいけどできない)」ということなどを考えているうちに、登場人物の心情がより理解できるようになる。
『アーニャは、きっと来る』
ナチス・ドイツがパリに侵攻した頃の、フランス山間部の小さな村レスキュンを舞台にした物語。ヒツジ飼いの少年ジョーが、ユダヤ人・ベンジャミンと知り合ったことをきっかけに、村をあげてユダヤの子どもたちの亡命の手助けをすることになる。
戦争の大きなうねりの中で、生きていく人たち。ジョーの祖父、母、結核で戦地から帰還した父、ジョーと友情を育むドイツ兵など、一人ひとりの人生がていねいに描かれ、胸がしめつけられるよう。ジョーと同じように、読者である私たちも、それらの出会いから多くのことを学ぶことができる。
読む&書くを楽しむポイント
- まずはじっくり物語を味わってほしい。この物語の主人公はジョーだけれど、それぞれがそれぞれの人生の主人公であり、いろいろな考えや思いを抱えている、ということがよくわかる。
- ピレネー山脈や自然の描写が美しく、壮大な景色が目に浮かび、映画を見ているかのよう。実際に、「Waiting for Anya」として映画化もされているので、読み終えた後、映像を見て、イメージを膨らませてみるのもおすすめ。
『牧野富太郎【日本植物学の父】』
日本植物学の父・牧野富太郎の伝記。富太郎は、家族ごと借金とりに追われる日々でありながら、いつも明るく、驚くほど豪快で、相手の立場の上下によって態度を変えることはないような人だった。そして、植物に対しては、愛情にあふれ、謙虚な姿勢を崩さず、どんな苦境にあっても、研究することは決して手放さなかった。
そんな富太郎のことばがこちら。
草木はわたしの命でありました。
草木があってわたしが生き、わたしがあって草木も世に知られたものが少なくないのです。
草木とは何の宿縁があったものか知りませんが、わたしはこの草木が好きなことが、わたしの一生を通じてとても幸福であるとかたく信じています。
好きなことに没頭する幸せだけでなく、苦難も描かれているのだけれど、力強く、励まされたような気持になる。また、家族や友人など、富太郎を応援する人たちの心遣いやあたたかさも、胸に響く。
読む&書くを楽しむポイント
- 自分の「やりたいこと」や「できること」、進路について悩んでいる人におすすめ。
- 周りの意見に流されてしまうのが気になるとき、チャレンジしたいことを無謀だと止められているときにも、何か発見があるかもしれない。
- 高知県立牧野植物園のHPを見ると、イメージが膨らむ。「牧野日本植物図鑑インターネット版」も、ぜひご参照ください。