今年も読書感想文の季節がやってきました。
第68回青少年読書感想文全国コンクール(2022年)の課題図書について、ストーリーや楽しく読んで楽しく書くポイントをご紹介します。小学校中学年の部をどうぞ。
『みんなのためいき図鑑』
でもくやしいな。みんながみんなのことを思いやってんのに、うまくいかへんって。
けど、あきらめたらあかん。みんなが、思いやりをもちつづけたら、きっとよくなる。きっと前に進める。
授業で班ごとにつくることになった「オリジナル図鑑」。でも、「たのちん」の班は、なかなかテーマが決められない。同じ班で保健室登校をしている加世堂さんに話をしながら、ためいきをついたら、加世堂さんが「たのちんのためいきこぞう」の絵を描いてくれた。家に帰ると、部屋の隅から声がして……。
友だちや親子などの人間関係、クラスの子たちの細やかな感情が、ファンタジー要素を織り交ぜながら描かれる。楽しく読めて、最後にはほっとする、読みやすい本です。
読む&書くを楽しむポイント
- あなたは、どんなときに、どんなためいきをつきますか?
- 気になる登場人物がいたら、それがなぜか考えてみよう。自分と似ているから、違うから、ここが好き・嫌いなど、具体的に比べよう。
- 家族や友だちと、うまくいかなかったことはありますか? それを、どうやって解決したかな? 両方がまちがっていなかったら、どうしたらいいだろう。
『チョコレートタッチ』
ジョンは、ご飯をちゃんと食べられないほどお菓子が大好き。中でも一番好きなのはチョコレートだ。ある日、道で不思議なコインで買ったチョコレートを食べると、何を食べてもチョコレートの味がするようになる。はじめは大喜びしたジョンだったけれど、口に触れるものがすべてチョコレート化するようになって……。
ジョンはどうすればもとに戻れるのか? かわいらしい表紙と「チョコレート」というあまい響きを裏切る、少しこわくてハラハラさせられる不思議な物語。
読む&書くを楽しむポイント
- ジョンのチョコレートのような何かが、ありますか? 食べものだけでなく、ゲームなど「ついがまんできずにしてしまう習慣」などについても考えてみよう。
- 「ジョン・ミダス」の名前の由来などがわかるあとがきは必読。小学生でもじゅうぶんわかる内容なので、ぜひ。
- 人によっては、おもしろく読めても、感想がうまく書けない…… ということがあるかもしれません。残念ながら、そういうこともあるもの。その場合は、あまりこだわらずに、別の本を選びましょう。
『111本の木』
男の子は神様たちからのすばらしい贈りもので、女の子は家の負担― そんなインドのある貧しい村が、スンダルさんの努力により、緑がいっぱいで、男の子も女の子も学校に行かれるようになるまでを描く。
ジェンダーの不平等や貧困、環境問題について、とてもわかる。やわらかい文章と美しい絵も理解を助けてくれるので、本を読みなれていない子、SDGsなどに興味がない子にも読みやすい。巻末の解説も、ぜひ親子で読んでほしい。
読む&書くを楽しむポイント
- いろいろな村の問題の中で、一番気になったのは何だろう? それはどうして? 日本にも、自分にも、似たようなことはある? それをどうやって解決する?
- 自分たちの暮らしを支えてくれているものについて、改めて考えてみよう。「当たり前」のようだけれど、他の国ではそうではなかったり、誰かの努力で成り立っていたりするものがないかな?
『この世界からサイがいなくなってしまう』
南アフリカで、絶滅の危機にあるサイを守ろうとする人々と、密猟者の戦いを取材したノンフィクション。
あまり知られていないサイの生態― たとえば、サイが妊娠してから赤ちゃんを産むまで16か月かかること、母親から独り立ちしたシロサイのオスの子どもが、同じ年ごろの相棒を見つけて旅をすること、密猟者に襲われそうになったとき、母親は子どもを、子どもは母親を守ろうとすることなど― に惹きつけられ、どんどん読める。読み終えるころには、サイが好きになってしまうはず。
また、絶滅の危機を救おうと奮闘する科学者たち(日本からは九州大学の林克彦教授が参加)、アフリカの貧困・教育・男女格差などの問題にも触れられていて、サイの密猟だけでなくさまざまな問題について考えさせられる。
懸命に生きるサイ、必死でサイを救おうとする人びとの姿に胸が熱くなる。
それぞれどんな生き物でも、その場所の自然環境のバランスのなかに、意味をもって組みこまれ、くらしているのです。
読む&書くを楽しむポイント
- 物語が苦手な人でも、ノンフィクションが苦手な人でも、読みやすい。
- 読む前と読む後、サイについての印象はどう変わりましたか? その変化はなぜ起こったのでしょうか?
- さまざまな問題について、自分にできることが何かありますか?